固体力学
当研究室では、ミクロな世界における材料の力学と物性の解明に取り組んでいます。材料の寸法がナノ・マイクロメートルスケールに達すると、私たちが一般的に知るマクロな材料とは異なる変形・破壊特性を示しますが、そのメカニズムや支配法則は未解明です。ナノ・マイクロ材料を対象に、独自の実験手法を開発し、変形や破壊を支配する「力学」と機能を創り出す「物性」に着目して、ミクロな視点から複雑な物理現象を解き明かし、技術革新を実現することを目指しています。
教員
平方 寛之 ( Hiroyuki HIRAKATA )
教授(工学研究科)
研究テーマ
モノが壊れる根源的な仕組みを解明し、さまざまな破壊現象に耐える「壊れない材料」を創出することで、持続可能な社会の実現に貢献する研究に取り組んでいます。
連絡先
桂キャンパス C3棟c2S07室
TEL: 075-383-3632
E-mail: hirakata [at] me.kyoto-u.ac.jp
松永 航 ( Wataru MATSUNAGA )
助教(工学研究科)
研究テーマ
材料の強度を支配する根源の物理を解明し、材料の検査および設計のアプローチから材料の破壊を未然に防ぐことができる革新的な技術の開発に取り組んでいます。
連絡先
桂キャンパス C3棟c2N03室
TEL: 075-383-3635
E-mail: matsunaga.wataru.5w [at] kyoto-u.ac.jp
王 吟麗 ( Yinli WANG )
助教(工学研究科)
研究テーマ
半導体薄膜や二次元積層材料の力学特性と電気特性に関するマルチフィジックス特性を解明し、高機能デバイスの開発を目指した研究に取り組んでいます。
連絡先
桂キャンパス C3棟c2N03室
TEL: 075-383-3635
E-mail: wang.yinli.2d [at] kyoto-u.ac.jp
研究テーマ・開発紹介
本研究室では,主に以下の研究テーマに取組んでいます。
(1)ナノ・マイクロスケールの材料強度と材料力学
(2)電子を介した材料強度制御の基礎物理の確立
(3)ナノ構造体・二次元材料・薄膜の機械的特性および物性評価手法の開発
(4)高強度・高機能ナノ構造材料の創製
(5)力学と他の物理現象のマルチフィジックス
電子により材料強度の根源を制御し,革新的な技術を実現する
人類は革新的な製品を生み出すたびに、予期せぬ破壊による損失を経験してきました。これを防ぐには、材料の強度を深く理解し、その特性を最大限に活かした設計が不可欠です。しかし、材料の強度がどのように決定され、どのようにコントロールできるのかについては、いまだ十分な技術が確立されていません。私たちは、材料に電子や光を照射して余剰な電子を注入することで、材料の特性が劇的に変化する現象に注目しています。例えば、ガラスのように脆い材料が、電子注入によって金属のように変形しやすい性質に変わることもあるのです。この現象を研究することで、材料の強度を根源的に変化させる仕組みを解明し、さまざまな破壊現象に耐える「壊れない材料」の実現を目指しています。
二次元材料・原子層積層構造の力学を解明し,壊れない材料を実現する
材料は力を受けると変形し、やがて損傷が進行して最終的に破壊に至ります。破壊は通常不可逆であり、一度生じると元の状態には戻りません。しかし、長期にわたり壊れない材料の実現は、材料研究における究極の目標の一つです。当研究室では、二次元材料(原子層材料)を密接に積層された「原子層積層構造」に注目しています。この構造体は、層間に強い結合を持たず、ファンデルワールス力などの弱い相互作用によって層同士が吸着しているため、大きな変形を許容し、破壊しにくい特性を示します。この「長期にわたり壊れない特性」がどのように発現するのか、その機構と背後にある普遍的な力学法則を解明することを目指しています。これにより、高強度でありながら「壊れない」「疲労しない」材料を自在に設計するための新しい学術基盤を構築することを目指しています。
ナノ力学と物性を活かした環境にやさしい柔軟電子デバイスの基盤技術を開拓する
「ナノ力学」と「物性」の観点から、環境にやさしい柔軟な電子デバイスの基盤技術を開拓することを目指しています。特に、次世代の柔軟な電子デバイスやエネルギーハーベスティング材料への応用を視野に入れ、電気―機械マルチフィジックス現象の解明に取り組んでいます。私たちが注目しているのは、ナノ構造体や二次元材料といった新しい材料系です。これらの材料は、その極薄構造や柔軟性から、変形を利用した新たな物性の発現に大きな可能性を秘めています。具体的には、変形と分極が関与する圧電効果やフレキソエレクトリック効果、さらに変形により電気抵抗が変化する圧抵抗効果などの複合的な物理現象を研究の中心に据えています。私たちは独自のナノ力学実験技術を活用し、材料の力学特性と物性発現の関係を解明し、柔軟な電子デバイスの設計に役立てることを目的としています。
ナノ構造体・薄膜の変形と破壊の機構と支配力学を解明する
ナノ薄膜やナノ構造体の機械的特性や強度を解明する研究に取り組んでいます。特に、これらの材料が示す特異な寸法効果に着目し、ナノスケールならではの力学挙動を解明することを目指しています。単調な外力による破壊に加え、き裂の進展特性や疲労、クリープによる長期的な破壊現象といった複雑なプロセスを対象に、詳細なメカニズムを探求しています。私たちの研究の特徴は、最先端の実験技術を駆使し、ナノスケールで発現する力学現象と破壊メカニズムを高精度で解析できる点にあります。これにより、従来の経験則に依存しない合理的かつ定量的な設計指針を提供することが可能になります。航空宇宙機器や柔軟電子デバイスといった多様な分野での応用が期待されるとともに、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。