粒子線材料工学
材料が放射線・粒子線に照射されたときに引き起こされる現象(照射効果)の研究は、固体内原子と放射線・粒子線との相互作用という観点からは物理的に、また原子炉材料、航空宇宙用材料のように照射下で使用される材料開発という観点からは工学的に重要な分野です。
その中で特に、照射による材料中の欠陥生成に関する基礎研究とそれを応用した材料開発をめざして研究をおこなっています。
教員
* メールアドレスの後ろに .kyoto-u.ac.jp を補ってください。
木野村 淳 ( Atsushi KINOMURA )
教授(複合原子力科学研究所)
研究テーマ
高エネルギー粒子線による材料分析法及び固体材料への照射効果の研究を行っています。
連絡先
複合原子力科学研究所 研究棟 Ⅱ-301号室
TEL: 072-451-2682
FAX: 072-451-2658
E-mail: akinomuraアットマークrri
徐 虬 ( Qiu XU )
准教授(複合原子力科学研究所)
研究テーマ
原子炉と核融合炉用の金属材料における中性子照射によって形成された欠陥の集合過程を調べ、照射による機械特性劣化の機構を明らかにする研究をおこなっています。
連絡先
複合原子力科学研究所 研究棟 Ⅱ-302号室
TEL: 072-451-2417
FAX: 072-451-2620
E-mail: xuアットマークrri
研究テーマ・開発紹介
照射下における欠陥形成過程の研究
照射下の点欠陥の形成と二次欠陥への発達過程を検出するために、当研究室ではイオン照射、電子線照射、中性子照射などの高エネルギー粒子の照射技術とともに、陽電子消滅分光法、透過電子顕微鏡観察、昇温ガス脱離分析法などの欠陥評価技術の開発利用を行っています。複合原子力科学研究所には、国内の大学の持つ研究炉としては最大規模の京都大学研究用原子炉KURがありますが、KURを利用して材料照射や低速陽電子ビームによる材料評価を行っています(図-1)。また、実験的研究とともに欠陥挙動や欠陥の状態を調べるための理論計算による研究も行っています。
図-1 KURを利用した低速陽電子ビームライン
原子力材料の劣化機構の解明
中性子照射による原子力材料の劣化は原子炉の安全性に関わる重要なことなので、劣化機構を明らかにすることが必要です。例えば、原子炉では、材料中に不純物として含まれている銅の析出による交換が不可能な圧力容器の脆化が特に問題視されています。いかに正確に材料の特性を予測するか、またいかに照射による特性変化の少ない材料を開発するかが研究の重点です。劣化した圧力容器鋼をさらに高い温度で照射すると、脆化の回復が見られます。図-2は、300℃一定温度照射と300℃/450℃温度変動照射における同時計数ドップラー広がり測定による銅析出物変化を示しています。温度変動照射の方が銅析出物のピークが低いことから、銅析出物が分解されたことが分かりました。
図-2 Fe-0.6Cuモデル合金における一定温度照射と温度変動照射による銅析出物の形成