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機械機能要素工学

 機械を設計する上で、"機械要素"と呼ばれる規格化された汎用部品-例えば、軸受、歯車、軸継手、ねじ、ばね、シール等-の使用は必須であり、見渡せば私たちの身の回りにもたくさんの機械要素が使われています。機械要素の高性能化・高機能化は、機器の省エネルギー化・長寿命化を目指す上で極めて重要な課題の一つであり、それらを裏支えする学問が"トライボロジー"、すなわち、摩擦・摩耗・潤滑現象の理解とその最適設計を目指す学問領域です。
 当研究室は「機械機能要素工学研究室」と銘打ち、機械要素で生じる物理現象の基礎的解明とその知見に基づく機械要素の高性能化・高機能化を目指し、メンバー一丸となって日々研究に取り組んでいます。

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教員

平山 朋子 ( Tomoko HIRAYAMA )

平山朋子教授(工学研究科)

研究テーマ

 トライボロジー現象の基礎的解明とその機械要素設計への応用を目指して研究に取り組んでいます。具体的には、(1)トライボロジー現象の解明に向けた表面・界面分析手法の確立、(2)ナノ/メゾ/マクロを繋ぐ表面・界面のトライボロジー特性計測、(3)低摩擦摺動を可能とする材料/潤滑油/摺動面形状の開発と評価、(4)機械要素の高効率化・高機能化に向けた最適設計指針の提示、等に関する研究を行っています。

連絡先

桂キャンパス C3棟c4S01室
TEL: 075-383-3660
E-mail: tomokoアットマークme.kyoto-u.ac.jp

研究テーマ・開発紹介

各種表面・界面分析法による境界潤滑層の構造および形成メカニズムの解明

 機械工学技術において、要素間の摩擦およびそれに伴う摩耗の発生に関する諸問題は極めて重要な課題であり、トライボロジー分野において多くの研究が進められています。機械における摩擦の形態は乾燥摩擦と潤滑摩擦に大別することができ、さらに潤滑摩擦は、一般的に、境界潤滑状態、混合潤滑状態、流体潤滑状態(弾性流体潤滑状態含む)の三態に分類することができます。中でも、境界潤滑状態においては、固体表面あるいは固体間に形成される柔らかい分子鎖状の境界潤滑層の存在がキーとなっており、これまで、それら層の構造および形成メカニズムに関する多くの議論がなされてきました。
 当研究室では、潤滑油中に含まれる添加剤から成る境界潤滑層に焦点を当て、さまざまな界面分析手法を用いることで、その構造や物性および形成・脱離といった動的プロセスの解明に取り組んでいます。下図は周波数変調型原子間力顕微鏡によって取得した金属/潤滑油界面の断面像であり、油性剤による吸着層の形成と外的刺激の導入によるその成長が明瞭に捉えられています。その他、中性子反射率法、全反射型赤外分光法、水晶振動子微量天秤法、表面力測定法等の手法に加え、さまざまな量子ビーム分析を駆使しながら、境界潤滑層に関わる情報の取得とそれに基づく潤滑剤および摺動面の最適設計に取り組んでいます。
[1] T. Hirayama et al., Langmuir, 33 (2017) 10492.

Fig1

各種摺動試験機による境界潤滑層の摺動特性の把握

 境界潤滑状態を表す摩擦モデルが始めて公に提示されたのは1930年代であり、固体間に形成される何らかの層の形成がキーとなっていることは古くより知られていました。しかしながら、境界潤滑層と呼ばれるそのような分子鎖状の層は極めて薄く、また、in-situ分析が必要であると同時に、状況や条件によってその姿を変えるなどの困難さから、固液界面における境界潤滑層の構造や物性は近年に至るまで謎に包まれてきました。
 当研究室では、そのような境界潤滑層が形成された表面に対して、せん断流れがどのような挙動を示すか、いわば、流れの見かけのレオロジー特性を調べています。特に、すきまを数ミクロンからサブミクロンのオーダにまで狭くすることにより、境界潤滑層の影響が現れやすい系を構築しています。実験装置の一例として、当研究室で開発した静圧軸受式狭小すきま摺動試験機を下図に示します。中央部に配置した静圧気体スラスト軸受によって一定すきまを構成し、その外周部で試験流体のせん断特性を測定する機構となっています。これにより、表面に添加剤から成る境界潤滑層が形成されると、固液界面ですべりが生じて流体の見かけ粘度が低減することなどが分かってきました。そのような狭いすきまでの流体のせん断特性を精密に計測することで、表面・界面のミクロな構造がマクロな流体の挙動に及ぼす影響について詳細に調べています。

Fig2 

ナノテクスチャによる流体潤滑および弾性流体潤滑特性の向上とその応用

 流体潤滑状態とは油膜を介して非接触摺動を実現している状態を指し、機械摺動面において最も望ましい潤滑形態とされています。その流体潤滑状態をより積極的に作るには、表面テクスチャの形成が有効です。一般的に、表面テクスチャが有効に働くテクスチャ深さはすきま長さと同程度のときであり、加工精度の向上に伴って摺動部のすきまがより狭小化する傾向にある昨今、ナノテクスチャの形成は流体潤滑状態の形成、保持に極めて有効な手法であると言えます。
 当研究室では、主に、フェムト秒レーザや精密エッチングによって形成した表面ナノテクスチャを対象とし、流体潤滑から混合潤滑に至るまでの潤滑挙動について詳細な研究を行っています。下図はフェムト秒レーザによって深さ数百ナノメートルの周期溝を施した球の写真と模式図であり、これを用いて弾性流体潤滑下における油膜厚さを調べたところ、テクスチャがない場合に比べて最大2倍程度にまで油膜が厚くなることを確認しました。また、MEMS創成技術と呼ばれる精密露光および精密エッチング技術を用いて深さ数~数十ナノメートルオーダのテクスチャを形成し、その表面をコロイドプローブ式FFMで走査したときの潤滑挙動を調査するなど、基礎から実用まで幅広くその効果に関する検証を行っています。
[2] T. Hirayama et al., Trans. ASME, Journal of Tribology, 136, 3 (2014) 031501.

Fig3 

各種動圧/静圧スピンドルの特性把握とその高性能化

 近年の機器の性能向上に伴い、その回転主軸(スピンドル)部に求められる性能も年々厳しくなってきています。例えば、OA、AV用小型機器のスピンドルには転がり軸受が用いられてきましたが、近年の高速、高精度回転の要求や小型化の動向を受け、それらスピンドルに流体動圧軸受が採用されるケースが増えてきています。
 当研究室では、これら各種スピンドルの更なる性能向上を目指し、より適切な軸受設計の提案を行っています。下図はジャーナル型動圧気体スピンドルの性能評価装置とその回転振れ測定の様子であり、ロータ外周のバケットを利用したエアタービン方式により、約30000rpmまでの回転試験を実現しています。過去の研究において、スパイラル溝の最適設計を行えば振れ精度を約半分にまで小さくできることを示し、実際のレーザビームプリンタ用ポリゴンミラーモータ等の設計に採用されています。
[3] S. Ikeda et al., Lubrication Science, 22, 9 (2010) 377.

Fig4