先端デザイン理工学

より豊かな社会を目指したモノづくりに向けて

人間社会をより豊かにしていくためには、今までにない革新的でかつ高機能な製品を開発していくことが必要不可欠です。先端デザイン理工学研究室では、そのような製品開発に必要な広義な意味での機械デザイン、すなわち構想設計から生産までの全般的な理工学に関する研究を行っています。

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教員

西脇 眞二 ( Shinji NISHIWAKI )

西脇 眞二教授(工学研究科)

研究テーマ

構造最適化、特に形状およびトポロジー最適化を中心に、機械製品の構想設計法、マルチフィジックス現象を対象とした構造・システム最適化、および開発・生産システムに関する研究を行っています。

連絡先

桂キャンパス C3棟 b2S07室
TEL: 075-383-3598
FAX: 075-383-3601
E-mail: shinjiアットマークprec.kyoto-u.ac.jp

研究テーマ・開発紹介

トポロジー最適化による機能構造物の形状創成

構造最適化を中心とした最適設計の方法を大別すると、寸法最適化、形状最適化、トポロジー最適化に分類されます。トポロジー最適化は、穴の数などの構造の形態をも設計変更とすることを可能とするもっとも自由度が高い方法です。本研究では、このトポロジー最適化に基づいて、今までにない新しい機能や高い性能をもつ構造物の形状創成の方法論の構築を行っています。現在までに、コンプライアントメカニズム、ピエゾ電気アクチュエータや熱電アクチュエータなどのアクチュエータ、ピエゾ抵抗センサーやひずみゲージセンサーなどのセンサー、MEMSにおける機械式レゾネータ、フォノニック・フォトニックバンドギャップ、誘電体共振器アンテナの構造などの構造の形状創成を対象として方法論を構築してきました。ここでは、コンプライアントメカニズムと誘電体共振器アンテナの設計例について説明します。

(a) コンプライアントメカニズム

コンプライアントメカニズムは従来の剛体とジョイントで構成される機構とは異なり構造の適切な場所に柔軟性を付加することにより、構造全体で機構の性能を得る新しいメカニズムです。コンプライアントメカニズムはその形状的特徴により、(1)無騒音、(2)無潤滑、(3)部品数の削減、(4)リサイクル性、(5)小型化などの多くの利点を持ち、機械部品だけでなく、医療部品、MEMS(Micro-Electro mechanical Systems)など多くの適用範囲が検討されています。図1はコンプライアントメカニズムの設計例です。また、図2は試作品、図3はMEMSへの適用例です。

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図1 コンプライアントメカニズムの設計例(コンプライアントグリッパー)

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図2 コンプライアントメカニズムの試作品

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図3 コンプライアントメカニズムのMEMSへの適用例

(b) 誘電体共振器アンテナ((株)豊田中央研究所,北見工業大学 共同研究)

誘電体共振器アンテナは、誘電体材料で構成され、高効率な小形アンテナとして、近年注目されています。ここでは、このようなDRAの設計に適用した例を説明します。図4は設計領域です。立方体形状の解析領域の上面、側面をPerfectly Matched Layer(以下、PMLと略す)で表された吸収境界条件で囲み、自由空間中を電磁波が伝搬する状態を表しています。底面は完全導体境界条件で遮蔽し、無限地板をモデル化しています。設計領域は、図に示したように、無限地板上に設置された直方体の領域とし、無限地板の中央下部に垂直に接続された同軸ケーブルから、設計領域に貫入した針状電極を介して電気信号を設計領域に受け渡します。なお、ケーブルの下端はMur一次吸収境界条件で終端しています。図5は得られた最適構造の例です。

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図4 誘電体共振器アンテナの設計領域

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図5 誘電体共振器アンテナの最適構造