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その昔、人間は二本足で歩き始めて、手に道具をもちました。道具は人間の手の先(手先)のものでした。やがて、道具は進化して手先から離れ、機械とよばれるようになりました。人間が求める機能を実現するために作り出した人間の分身が機械です。いま、人間の求める機能は、10年前のものに比べても大きく変わり、それとともにその機能のための機械も変化しました。強力なパワーをもって大規模電力を生み出す発電所のタービンや時速500 kmで走行するリニアモーターカーは、いまも機械でありつづけますが、マクロには動きの見えない燃料電池システムや機能性のナノ構造、さらには、概念としての賢いソフトシステムなど、従来の機械のイメージにはなかったものも人間の分身として期待され、機械工学はその裾野を広げつつあります。「ものづくり」の "もの" は、いま、ますます多様になりつつあります。

機械工学では、マイクロからマクロにわたる広範な物理系をその対象として、生産プロセス、エネルギー、環境、生活、生命・生体・医療などに関する人間のための技術の進展を図ります。その基礎となる学は、材料・熱・流体の力学と物性物理、機械力学、振動工学、制御工学などであり、さらにその基礎には、機械システムとそのエレメントの設計・製造・評価・診断・制御に関する工学の考え方が求められます。

機械理工学専攻では、人間と自然との共生をめざす広い視野をもって、これらの智恵や知識を主題とする研究・教育を行ない、また、挑戦的に課題を設定しそれを克服する能力をもってリーダーとなりうる技術者・研究者を育成し、もって、社会と産業界・学界の期待に応えるべく努めています。

機械理工学専攻には、機械システム創成学、生産システム工学、機械材料力学、流体理工学、物性工学、機械力学の6基幹講座と、バイオエンジニアリング、粒子線物性工学の2協力講座が設置され、その計18分野が有機的に連携して基礎的かつ先端的な研究・教育を進めています。