光工学

光は物質と密接に関連しています。物質が発する光を調べることによりその本質に肉薄し、物質に光を作用させることによりそのありようを制御できます。
本研究室では分光学の方法を基礎として、物質のいくつかの側面について測定手法の開拓、制御法の探求をしています。

具体的には、核融合研究用トカマクなどのプラズマに対する新たな分光測定法の開発、放電プラズマを用いた励起原子の種々の衝突過程研究、近接場光の特性を利用した新たな測定法の開発、線形・非線形の光応答を利用した固体界面・表面制御の研究などをおこなっています。

教員

* メールアドレスの後ろに .kyoto-u.ac.jp を補ってください。

蓮尾 昌裕 ( Masahiro HASUO )

 教授(工学研究科)

研究テーマ

原子間、表面と原子、ナノ領域に局在した光と原子の相互作用の理解と制御を目指して、レーザー光を用いた高感度・高精度の分光手法の開発をおこなっています。また、光による高機能界面・表面の創製を目指した、固体の光照射効果の分光研究をおこなっています。

連絡先

桂キャンパス C3棟 b4S04室
TEL: 075-383-3644
E-mail: hasuoアットマークkues

四竈 泰一 ( Taiichi SHIKAMA )

四竈 泰一講師(工学研究科)

研究テーマ

光を利用した新しいプラズマ診断法の開発を目指して研究を行っています.
プラズマ中の原子,分子,イオンからの発光スペクトル形状を精密測定することで,温度,流れといったダイナミクスや外場との相互作用を評価するための手法を開発しています.

連絡先

桂キャンパス C3棟 b4S05室
TEL: 075-383-3645
E-mail: shikamaアットマークme

藤井 恵介 ( Keisuke FUJII )

藤井 恵介助教(工学研究科)

研究テーマ

分光計測に基づいた新しいプラズマ診断法の開発を目指して研究を行なっています.
特に,原子発光線のスペクトル形状を高いダイナミックレンジで計測することで,核融合プラズマ中の粒子輸送を評価する手法を開発しています.

連絡先

桂キャンパス C3棟 b4N02室
TEL: 075-383-3647
E-mail: fujiiアットマークme

研究テーマ・開発紹介

偏光プラズマ分光:プラズマに対する新たな分光測定法の開発

プラズマ中の原子・イオンからの発光スペクトルを観測してプラズマの状態(密度・温度など)を計測し、プラズマの中で起きている物理現象を調べる「プラズマ診断」の発展として、当研究室ではスペクトル線の強度・プロファイルに加えその偏光をも観測量とする「偏光プラズマ分光」の開拓を目指しています。

この方法は、今まで多くの場合熱的分布が仮定されてきたプラズマ中電子の速度分布関数について、その非等方性の情報をも得ることができるのが特徴です。スペクトル線強度・縦アライメント(偏光度)から、原子のpopulationとalignmentを評価し、励起原子のalignment生成の要因となった電子衝突励起の非等方性を通じて、電子速度分布関数の非等方性を定量的に知ることが出来ます。

実験は、カスププラズマECR(2.45GHz)放電・TRIAM-1Mトカマクプラズマ(九州大学応用力学研究所)、LHDプラズマ(核融合科学研)、超短パルスレーザによって生成されたプラズマ(原研関西研)でおこなっています。

 
図-1 ECR(2.45GHz)放電プラズマからのヘリウム発光線の偏光:磁場に対して垂直方向の電子の運動が大きいことが分かる。

放電プラズマを用いた励起原子の衝突過程のレーザー分光研究

原子間のポテンシャル、特にその非対称性を評価にするには、原子間衝突による原子の偏極(alignmentとorientation)緩和を観測することが有効です。私たちは、液体ヘリウム温度まで冷却可能な放電管(図-2(a))を用いた偏極緩和計測レーザー分光システムを開発し、励起状態にある希ガス原子の偏極緩和を調べています。

図-2(b)が結果の一例です。計測された偏極緩和速度係数の温度依存性(○)は、海外共同研究者による理論計算の結果(実線)と極低温域で大きく異なります。未知のメカニズムの存在を示唆しています。

一方、気体中の原子が熱平衡に至るプロセスや原子と表面との相互作用をミクロに探るため、高感度なレーザー分光システムを開発し、熱的に非平衡な原子の速度分布や衝突による原子の速度変化を調べています。
同時に、プラズマ中の励起原子のダイナミクスについて、原子間ポテンシャルに基づいた計算機シュミレーションもおこなっています。


図-2 極低温プラズマ分光実験用の三重放電管(a)とネオン励起原子のヘリウム原子との衝突による偏極(alignment)緩和速度係数の温度依存性(b)

近接場光(エヴァネッセント光)の特性を利用した原子の分光研究

エヴァネッセント光は誘電体表面や微小開口近傍のナノ領域に局在する光です。光の回折限界を超えた空間分解能で光学的な観測をおこなうために重要なもので、近接場光学顕微鏡の動作原理として良く知られています。

私たちは、全反射に伴い発生するエヴァネッセント光を利用し、固体表面近傍の原子の挙動や原子とエヴァネッセント光の相互作用を調べています。特に、原子の電気四重極子遷移の大きさが、エヴァネッセント光に特有な波数ベクトルに依存することを、実験的に実証しました。エヴァネッセント光に特有な波数ベクトルは、その空間的な局在を反映しています。このことは、原子の電気四重極子遷移による吸収を介して、そこに存在しているエヴァネッセント光のキャラクタライゼーションが可能であることを示しています。


図-3 全反射におけるエヴァネッセント光の模式図(a)とその特徴的な波数ベクトルと電気四重極子相互作用(b) 

線形・非線形の光応答を利用した固体界面・表面の分光研究と制御

固体の界面や表面では、その状態の制御により、有効な新機能が創製される可能性があります。私たちは、固体界面・表面の状態を調べる分光法を開発するとともに、光照射による界面・表面状態の制御の可能性を探っています。

図4は、二酸化チタン単結晶に蒸着した塩化第一銅薄膜表面の光照射による変化の様子です。光照射による表面状態の改質、特にナノ構造の自発的な創製が見出されました。塩化第1銅は光物性研究で知られた半導体で、紫外光照射による物性の変化にも興味が持たれます。

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図-4  二酸化チタン上の塩化第1銅表面における光照射効果。照射前(a)、10時間照射後(b)