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中性子物理工学

人間に役立つ種々の材料の開発研究がおこなわれておりますが、その特性の発現機構を解明することによりさらに良い特性を持った材料の発明や改良をおこなうことが可能となります。

本研究室は、中性子の特徴を最大限に利用した中性子広角・小角散乱や非弾性散乱実験をおこない、不規則系(非晶質、ガラス)物質や非平衡物質そして結晶物質で構成される機能材料、エネルギー材料そして超高温材料などの原子の配列(構造)や運動を明らかにしていく研究をおこなっております。また、構造データをもとにリバースモンテカルロ法などを用いて原子配列の視覚化をおこない、それぞれの材料の構造の特徴を明らかにしようとしております。

教員

* メールアドレスの後ろに .kyoto-u.ac.jp を補ってください。

森 一広 ( Kazuhiro MORI )

森 一広准教授(原子炉実験所)

研究テーマ

酸化物は、燃料電池や建造物など、我々の身近なところで数多く利用されています。このような機能性酸化物材料を対象として、粉末中性子回折による精密結晶構造解析を基に、材料特性の発現機構の解明、材料の高性能化および新しい機能性材料の開発に取り組んでいます。

連絡先

熊取原子炉実験所 研究棟 2階218号室
TEL: 072-451-2363
FAX: 072-451-2635
E-mail: kmoriアットマークrri

小野寺 陽平 ( Yohei ONODERA )

助教(原子炉実験所)

研究テーマ

連絡先

研究テーマ・開発紹介

金属ガラスやカルコゲナイドガラスなど無秩序系物質の構造学的研究

気体や液体状態の物質を非常に速く冷却することにより原子が乱れたまま固化することをガラス化(アモルファス化)と言います。その他、メカニカルアロイング法でという機械的に物質を叩くことによっても原子レベルの配列が壊れ、ガラス状態の構造に変化します。このような方法によって作られるガラス物質の構造を知ることは、単に自然界を解明することだけではなく、ガラス状態になって新しい特性を持つ材料を見いだすことに役立ちます。

例えば、メカニカルアロイング法によって作られたカルコゲン系ガラスの短距離・中距離構造は、気体や液体状態からの急冷によってつくられるガラスのそれと大きく異なる可能性があります。その構造の違いについての詳細な知見を得るために、中性子回折を用いて原子配列を観察しています。

Se -Te系ガラスの構造の組成依存性を高分解能中性子回折で観察を行った結果、これからミリングで形成されたアモルファスSeは、液体急冷のアモルファス Seと比べて、Se-Se結合が切断され、より短い鎖状分子が集まってガラスを構成していることが明らかとなりました。次に、Teの添加により、Se- Se結合が切断されて生成したダングリングボンドとTeが結合し2配位鎖状構造が再生されていくことが分かりました。

水素貯蔵材料の構造学的研究

(1)ナノ・グラファイトの構造学的研究

本研究室ではグラファイトをメカニカルミリングすることによって、そのグラファイトがナノ化することを明らかにし、そのナノ・グラファイト中に水素を吸蔵させることができることを世界で初めて見いだしました。

このナノ・グラファイト水素吸蔵材料は安価で軽量という特徴を持っていることから注目されています。しかし、これを実用材料として発展させるためにはその吸蔵された水素がどのような位置に存在しているのかを明らかにすることが必要です。

当研究室では中性子回折を用いると水素原子(重水素)を観察しやすいという特徴を生かして、水素原子の存在位置を明らかにする研究をおこなっています。

図-1は水素吸蔵したナノ・グラファイトの中性子散乱によって得られた原子の分布を示しております。
図-2は図-1の原子分布関数から得られた情報をもとに、その構造を模式的に示したものです。
水素の存在状態は2種類あり、その1つはミリングにより生成した炭素のダングリングボンドと結合している水素であり、もう1つはグラファイト層間に位置する水素です。

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図-1 水素を吸蔵したナノ・グラファイトの動径分布関数(RDF)


図-2 水素を吸蔵したナノ・グラファイトの模式図

(2)水素誘起アモルファス材料の構造学的研究

ある種の合金は水素を吸蔵することにより結晶からアモルファスへと転移します。この現象は水素誘起アモルファス化と呼ばれ、水素吸蔵材料の実用化の観点から重要です。我々は、アモルファス化における構造変化の解明に取り組んでいます。

図-3は中性子、X線回折及びリバースモンテカルロ計算により得られたアモルファスTbFe2D3.0とTbNi2D2.4の3次元構造を示しています。TbFe2D3.0ではFe(青丸)とTb(黄丸)の間で組成揺らぎが生じており、水素(赤丸)がTbの周囲に存在することが明確に確認できます。一方、TbNi2D2.4の原子分布は比較的均一です。

この結果は、構成金属を適切に選択することにより、水素吸蔵による母体合金の相分離傾向を抑えることができることを示しています。このような構造のデータは、水素吸蔵材料創製の基礎データとして重要なものになります。


図-3 アモルファスTbFe2D3.0とTbNi2D2.4の原子配列の視覚化

電池材料の構造学的研究

電池の世界は急激な展開を見せていることを皆さんよく御存じだと思います。例えば、小型の高エネルギー密度・高出力密度の2次電池から、インテリジェントカード用のペーパー電池、電気自動車用の二次電池や軽量燃料電池、そして夜間の余剰電力の蓄積やスポット発電用の大型蓄電池や燃料電池などの利用が拡大するとともに、それらの研究開発が活発化しております。

本研究室では種々の電池材料の構造学的基礎研究をおこなっております。その中で例をあげますと、身近な生活の中で多様に使われているリチウム二次電池の負極材料に着目し、Sn系ナノコンポジット合金負極材料を創製し、その構造解明をおこない、さらに高い電池特性を持つ材料の開発のための基礎情報を得ようとしています。

研究としては、リチウム原子の存在位置及び存在状態を明らかにし、電池材料としてリチウム原子の存在しやすい、かつ動きやすい構造を見いだすことです。